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着物大事典

【特集版】着物コラム

八坂庚申堂と補陀洛寺でフォトジェニック!

京都名所特集と銘打ってご紹介するのは、京都にある神社仏閣の特徴や歴史についてです。細かくご紹介して、観光などの際に役立てていただきたいと考えております。第11弾の今回は八坂庚申堂(やさかこうしんどう)と補陀洛寺(ふだらくじ)です。

 

●八坂庚申堂

東山の清水寺や光台寺がある一帯は、修学旅行生や外国人観光客が訪れる観光名所です。八坂の塔が見える狭い観光道路を歩いていくと人通りの多い賑やかな通りに面している八坂庚申堂がひっそりと建っています。地元の方からは「八坂の庚申さん」と呼ばれたりして親しまれているが、正式名称は「大黒山延命院金剛寺」といいます。960年に建てられた古くからある寺院です。庚申堂とは中国の道教の庚申信仰の霊場で、「庚申」とは干支の「庚(かのえ)」「申(さる)」にあたる日のことです。道教によると、人間の体の中には三尸(さんし)という虫がいるとされ、庚申の夜に体外へ抜け出し、天帝にその人間の悪行を告げ口して寿命を縮めるといわれていました。そこで、庚申の夜に夜通し起きていることで虫が体外へ出ていくのを防いで寿命が縮まないよう身を慎んだといいます。

この寺の境内に入ってまず目につくのは、あちこちにぶら下がっているたくさんのカラフルなお守りです。これは布で作られたお守りで、手足を縛られて動けなくなった猿の姿を表している「くくり猿」といいます。なぜ猿がくくられているのかというと、それは欲のままに行動する猿を、動けない姿にすることで欲を我慢することの大切さを人間に教えているのだそう。人は誰でも願いをもっていますが、願いを叶えるために欲望のままに暴走してしまうことがあります。そんなとき、心をコントロールしてくれるのがくくり猿なのです。くくり猿に願いを込めて欲望を一つ我慢することで、ほかの願い事が叶うといわれています。

庚申の夜は1年のうちに6回あります。その日、八坂庚申堂ではこんにゃく炊きが行われます。これはこの寺院の開祖が父の病気平癒にこんにゃくを炊いてご本尊に捧げ祈願したところ無事に治ったことから、庚申の日に振舞われるようになったそうです。くくり猿があちこちにぶら下がったカラフルでインパクトのある光景は全国でも珍しく、京都に立ち寄ったときはぜひご覧になってください。

 

●補陀洛寺

京都市の北方にある鞍馬に行くには叡山電鉄鞍馬線を利用するのですが、終点の鞍馬駅の3つ前に市原駅があります。市原は鞍馬山の山中にあり、木々が生い茂るのどかな山村です。平安時代には狩猟場として利用され、盗賊が出没するようなへき地でした。その市原駅のほど近くに補陀洛寺という寺があります。街道沿いの寺の入り口に「こまちでら」と彫られた石碑があるとおり、ここは世界三大美女として数えられるほどの美女として有名な小野小町ゆかりの寺なのです。小野小町の培養塔や、小町姿見の井戸などがありますが、驚くのは小野小町の晩年の像が安置されているところです。本堂の本尊横に「小町老衰像」という札が立てられた像があります。年老いてやせ衰えていて、あばら骨が浮き出た老婆がかの小野小町というのです。小野小町は平安時代の歌人で仁明天皇に仕えました。宮中ではその美しさに多くの男に求婚されましたが、誰にもなびきませんでした。小野小町には「百夜通い」という次のような逸話が残っています。

深草少将が小野小町に恋焦がれて求愛をしたところ、「百夜通いを続けたら契りを結ぶ」と小町から言われました。そこで深草少将は、彼が住む深草から小野小町が住む小野の里まで5キロの道を毎晩通い続けました。小野小町は彼が毎夜運んでくる木の実で日数を数えました。ところが99日目まで通ったところで大雪が降り、深草少将は木の実を手に握ったまま道すがら息絶えてしまいます。小野小町は99個の木の実を小野の里に蒔いたとも、その木を99本植えて岩屋堂にこもり彼の霊を弔いながら92歳で亡くなったとも伝えられています。

補陀洛寺には小野小町の培養塔の傍らに深草少将の供養塔が建てられています。また、この寺に伝わる説によると、宮廷で華やかに暮らし大勢の男から愛された小野小町は天皇が崩御され、深草少将にも死なれてからは宮廷を去り諸国を放浪する旅に出たといいます。晩年は落ちぶれ、流浪の果てにこの寺にたどり着き没したのです。小野小町の遺骸はこの地で野ざらしにされ、道端に捨てられていたしゃれこうべの目の穴からススキが生え、風が吹くたびにしゃれこうべは痛いと叫び続けたといいます。寺を訪れた恵心僧都が哀れに思い遺骸を寺に祀ったところ小野小町はようやく成仏したそうです。流浪した小野小町は青森から九州までいたるところにゆかりの地が伝えられています。

 

いかがでしたでしょうか。フォトジェニックな写真が撮れると今では観光客が多く訪れる八坂庚申堂と一方で多くの逸話を残して美女として名を遺した小野小町の最後の地をご紹介しました。今と昔が多く残る地である京都を着物で散策されるのも観光の際はいい思い出になるのではないでしょうか。着物レンタルを検討される際はぜひ着物レンタルVASARA京都駅店へ。京都駅内に店舗を構えていますので、交通の便がよく、観光のスタート地点として最適です。

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